J.K.ローリングの驚異的ベストセラー『ハリー・ポッターと賢者の石』に、ジョン・ウイリアムスが見事に音楽をつけた。あのマジカルで、スリルと興奮に満ちた不思議な世界を今すぐにでも体験できるサウンドトラックだ。<p> ウィリアムスは通常、映画音楽を作るときは原作には頼らないようにしている。しかし今回は、J.K.ローリングのハリー・ポッター第1作から大いに創作意欲を刺激され、全体の核となるぴったりのモチーフ(<19>にはっきりと表れている)を作り出したといわれている。それは、はじめはチェレスタ(鐘のような音を出すピアノに似た楽器)による可憐なワルツのように聞こえるが、やがてそこに無数の心象風景や背景ムードを表現した音の装飾が美しくほどこされていく。特に、監督クリス・コロンブスの作り出す暗いトーンにぴったりの不吉な感じの音が効果的によく使われている。明らかに、サン・サーンスとチャイコフスキー(他にも何人かいるのだが)風のメロディーを幻想的にアレンジしたような印象があるのは否めないが、映画のすばらしいハイライトシーンで息つく暇もないほどの緊張感を盛り上げる<10>はウィリアムスの代表的な一曲となるであろう。<p> あちらこちらでウィリアムス自身の作品からの盗用(当然それは『フック』や『スターウォーズ』のテーマからの変形ということになるわけだが)の跡が見うけられるが、それでもなお『ハリー・ポッター』のミステリアスでマジカルな世界を文句なくあざやかに描き出している。(Jeff Shannon, Amazon.com) from Amazon